連載
2023年9月7日
その症状、秋バテかも!? 原因や対策、解消法などをご紹介
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- そもそも「秋バテ」とは?
- 秋バテの原因
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- 統計から見た秋バテの実情と症状
- 秋バテを訴える人の割合
- 秋バテに見られる主な症状
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- 秋バテによる不調の解消に役立つ対策
- 日常生活でできる対策
- 漢方から考える秋バテ
- 日常生活でできる対策
- 漢方から考える秋バテ
暑かった夏がようやく終わりを告げ、やっとこれからは過ごしやすくなる…と思った矢先に、「身体がだるい」「頭が重い」「疲れが取れない」といった不調を感じたことはありませんか?
もしかしたらそれは「夏バテ」ならぬ、「秋バテ」が原因なのかもしれません。
秋バテの原因
基本的には、夏バテと秋バテの原因に大きな違いはありません。しかし秋バテの場合、夏の間の生活習慣も関係しているようです。
■冷え
近年は地球温暖化の影響もあり、夏の気温はますます上昇する傾向にあります。そのため、クーラーの効いた環境にいる時間や、冷たい飲み物・食べ物を摂る機会が例年以上に増えていることでしょう。しかしこのような状況が、秋バテの原因を招いているとも言えます。
例えば、涼しい部屋から暑い屋外に出た場合、その温度差により身体は自分が思っている以上にストレスを感じています。これにより自律神経が影響を受けると、身体の機能を正常に調節できなくなり、不調を感じることがあります。また冷たいものの摂りすぎは身体の内側を冷やし、胃腸の機能が低下することでも体調不良につながります。
このような夏の不調が十分に回復していない状態のまま秋に突入すると、秋バテにかかりやすくなります。
■気象の変化
もう1つの原因として、秋の天気が考えられます。
秋は、夏と比較して朝晩と日中の気温差が大きくなる傾向があり、また秋雨前線や台風などにより気圧も変化しやすい環境だと言えます。これらの気象の変化に対して自律神経の調節が追いつかず、身体のバランスが乱れ、身体に不調が現れることがあります。
このように、秋バテは主に冷えや自律神経の乱れが関係していると推測できます。
■秋バテを訴える人の割合
実際に、秋バテの症状を訴える方の割合はどれくらいで、またどのような症状があるのでしょうか。これらについてアンケートを取ったところ、結果からある特徴が見えてきました。
夏の終わりから秋にかけて、身体に何らかの不調を感じたことがある人の割合は48%で、約2人に1人が体調不良を覚えるようです。さらに男女別では、男性は約4割に対して女性は約6割の人が不調を感じやすい傾向にあることがわかりました。
また年代別で見た場合、女性は年代が高くなるにつれて身体の不調を訴える割合が増えていることに気づきます。
男性と比較した場合、女性は生理や更年期などの影響も加わりホルモンバランスが乱れやすく、さらに熱をつくり出す筋肉量が少ないことから冷え症の方が多いとされています。そのため、これらの要因と、女性に秋バテが多く、年を取るに従って割合が増加する理由との間には、何らかの関連性があると考えられるかもしれません。
■秋バテを訴える人の割合
続いて、感じやすい秋バテの症状を具体的に確認してみましょう。
割合の違いこそありますが、男女共にもっとも多いのは「身体がだるい、疲れやすい」で、男性では2割強なのに対して、女性の4割以上が感じています。さらに「冷え」に関しては男女間で2倍の差があります。
女性はホルモンバランスが乱れやすく、冷えを感じやすいことが、この結果につながったと思われます。また体調面だけでなく、気温の低下・気圧や気候の変化により落ち込みやイライラといった精神的な面にも影響をおよぼしていることも、秋バテの症状の特徴だと言えるでしょう。
しかし不調に対しての対処法に関する質問では、女性では約48%、男性にいたっては約52%の方が、不調を感じつつも我慢していると回答しており、秋バテに対して特に何の対策も取っていないことがわかりました。
夏の終わりから秋にかけて感じる身体の不調に関する調査概要
調査手法:インターネットリサーチ(QIQUMO)
実施時期:2023年7月25日~26日
調査対象:20~50代男女800名(各年代100名ずつ)
調査実施機関:株式会社クロス・マーケティング
秋バテの症状を感じている多くの方が不調を感じつつも我慢をしているとわかったところで、少しでも不調を解消するためにできる対策をいくつかご紹介します。
■日常生活でできる対策
秋バテになる主な原因は、自律神経の乱れと冷えです。以下の方法を日常生活に取り入れることで、これらの原因を改善する効果が期待できます。
- 1.エアコン対策
- 身体が冷えすぎないよう、職場や学校では上着やひざ掛けなどで調節するといいでしょう。
また外出時の身体への負担を減らすためにも、エアコンの設定は、外気温との差が5度以内、大きくても7度以内になるように心がけることも大切です。
風向はスイングに設定し、それでも「冷たい風が身体に当たってつらい!」と感じるときは、風量を下げてサーキュレーターを併用し、空気を循環させるのも有効な方法です。 - 2.ぬるま湯(38~39℃程度)にゆっくり浸かる
- 湯舟に浸かることで、血行がよくなります。またリラックス効果も期待できるので、ストレス緩和にも役立ちます。入浴剤を活用するのもおすすめです。
- 3.適度な運動やストレッチ
- 1回20分程度のウォーキングや軽いストレッチは、筋力の維持・向上や血行改善、またコリの緩和などに有効です。また適度に汗をかくことで、ストレス解消にもつながります。
- 4.規則正しい生活
- 栄養のバランスが取れた3度の食事、毎日決まった時間に起床・睡眠などの健康的な生活は、自律神経を整えるために大切です。
なお献立は、主菜1品+副菜1~2品、または主菜1品+副菜1品+汁物1品にすると、自然とバランスを取ることができます。
■漢方から考える秋バテ
漢方薬を取り入れた対策も、秋バテ解消には有効かもしれません。
漢方では、秋バテを「身体のエネルギー(気)が足りていない状態」、つまり「気虚(ききょ)」により起こると考えます。例えば、夏の暑さや室内外の温度差に対応するために、いつも以上に「気」を消耗したり、冷たい物を摂りすぎて胃腸機能が低下したりすることで、「気」の生産量が減ることが原因とされています。
下記のチェックリストに1つでもあてはまる方は、「気虚」体質の可能性があります。
- □ 疲れやすい
- □ 意欲がわかない
- □ 食欲がない
- □ 息切れしやすい
- □ カゼをひきやすい
■「食養生」による対策
漢方にも、「食養生」という概念があります。これは、旬の食材や身体が求める食事を正しく選ぶことで、健康を維持する効果が期待できるというものです。
日々の食事で「気」を補う食材を取り入れてみるのも、秋バテ対策としておすすめです。
【「気」を補う食材】
シイタケやしめじなどのキノコ類、オクラ・山芋・納豆などのネバネバした食材、雑穀類
■漢方を上手に取り入れて秋バテ知らずの身体へ
漢方には、同じ症状に対して、一人ひとりの体質や症状に応じて異なる漢方を処方する「同病異治」と、1つの漢方をそれぞれ異なる症状に対して処方する「異病同治」という考え方があります。つまり同じ「秋バテ」であっても、オーダーメイドのように人それぞれに異なる処方が選択されることが特徴です。そのため、日常生活での対策に加えて漢方薬を服用すれば、気虚体質の改善が期待できます。
自分に合った漢方薬を選択するには、薬剤師や登録販売者に相談することが大切です。適切な漢方薬の服用は、結果的に1日も早い改善につながるでしょう。
疲れの症状に使われる漢方薬
https://www.tsumurakampo.jp/product-region/?region=fatigue&trouble=003
頭痛の症状に使われる漢方薬
https://www.tsumurakampo.jp/product-region/?region=pain&trouble=010
不安(気分の落ち込み)の症状に使われる漢方薬
https://www.tsumurakampo.jp/product-region/?region=stress&trouble=005
高座渋谷つばさクリニック
院長 武井 智昭
https://tsubasakai.or.jp/koza/
■経歴
2002年 慶應義塾大学医学部卒業
2004年 立川共済病院勤務
2005年 平塚共済病院小児科医長として勤務(内科)
2010年 北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室兼任
2012年 横浜市内のクリニックの副院長として勤務 (スマイルこどもクリニック)
2015年 小谷クリニック 内科・小児科(訪問診療部)部長
2017年 「なごみクリニック」内科・小児科・アレルギー科 院長
2020年4月 「高座渋谷つばさクリニック」院長就任
■専門医・認定医
小児科専門医・指導医
日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)