連載
2023年7月10日
梅雨の不調(気象病)に対する対処法
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- 気象病とは
- 気象病の原因
- 気象病の主な症状
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- 梅雨の不調(気象病)に関する調査結果
- 梅雨に感じる不調(気象病)の症状の有無について
- 梅雨に感じる不調(症状)について
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- 症状緩和の対策(養生法)
- 自律神経を整える
- 漢方から考える改善方法
「気象病」という言葉を耳にしたことのある方も多いのではないのでしょうか。
天気痛や季節病などとも呼ばれているこの病気は、その名が示すとおり、天気の変化が影響して身体や精神に起こるさまざまな症状のことで、特に梅雨時に多く見られる傾向があるようです。
気象病の原因
気象病が発症するメカニズムはまだ解明されていません。しかし、以下の要因が関係して自律神経に影響をおよぼすことが、主な原因だと考えられています。
■気圧
気象病の発症原因の中でも、特に大きく関係しているとされているのが気圧の変化です。
気圧は人間の身体に対しても常にかかっている状態ですが、体の内側から同じ力で圧を発することで、均衡を保つよう自然と調整を行なっています。
ところが、季節の変わり目や台風接近などにより気圧が下がると、この調整がうまくできなくなることがあります。すると、自律神経の乱れのほか、身体への圧力が弱まって血管が拡張し、器官や神経などに影響を与えるため、気象病を引き起こすと考えられています。
■気温
季節の変わり目や朝晩の寒暖差が大きくなる時期は、自律神経の調節が追いつかずにバランスを崩しやすく、不調や不快感、症状が悪化しやすくなることがあります。気象病の症状にアレルギー症状や疲労感が現れるのは、このことが関係していると推測できます。
■湿度
気象病の原因には、湿度も関係していると考えられています。
湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体の水分の代謝が悪くなるため、うつ熱や局所の冷えなどの体温調節がうまくできなくなることがあります。その結果、痛みなどが起こる要因になります。
気象病の主な症状
気象病は正式な病名ではなく、天候の変化が影響して起こる不調の総称であるため、症状も多岐にわたります。例えば自律神経の乱れによる頭痛や片頭痛、めまい、耳鳴り、倦怠感、などのほか、神経痛などの痛み、肩こり、喘息の悪化、さらに抑うつなどの精神的な症状が起こりやすいと言われています。
実際に、梅雨時に不調を訴える方はどれくらいの割合で、どんな症状が多いのでしょうか。調査の結果から、以下のような傾向があることが見えてきました。
梅雨に感じる不調(気象病)の症状の有無について
調査の結果、2人に1人が梅雨時に何らかの不調を感じていることがわかりました。また男女別では、男性に比べて女性に不調を抱えている方が多く、特に女性30~40歳代の60%以上の方がこの時期になると体調の悪さを覚えるようです。
梅雨に感じる不調(症状)について
次に、具体的にどのような不調が多いのかについてまとめたのが以下のグラフです。
特に多かったのは「頭痛・頭重感」および「疲れ、だるさ」で、ほかに「首や肩のこり」も梅雨時の不調として男女共に多い傾向がありました。
しかし「気分の落ち込み、不安感」や「眠気」、「めまい」、「吐き気」といった症状については男女間で大きな違いがあり、女性の割合は男性の約2倍もしくはそれ以上でした。この差についてはっきりとした理由は不明ですが、女性は男性に比べ、ホルモンバランスの影響で自律神経が乱れやすいことと関係しているのかもしれません。特に生理中や更年期の女性では、天候の変化による不調を感じやすいようです。
このほか、回答者の多くがひとつの症状ではなく、複数の症状があると答えています。また不調に対する対処法に関する質問では、40%の方が不調を抱えつつも「特に何もせず我慢している」と回答しており、気象病に対しては何も行なっていないことがわかりました。
■調査概要
実施時期:2023年5月12日(金)
調査手法:インターネット調査
調査対象:全国の20~50代男女 各400名 計800名
調査実施機関:株式会社クロス・マーケティング
つらい症状を我慢しているという方は、ぜひ、次に紹介する養生法を試してみてください。
自律神経を整える
自律神経を整えるためのセルフケアを行なったり生活を見直したりすることで、改善や予防につながることもあります。
例えば以下のような方法がおすすめです。
■規則正しい生活
毎日同じ時間に起床、睡眠、食事などをとるよう心がけ、生活リズムを整えましょう。また朝日を浴びると眠りを誘発するメラトニンと呼ばれるホルモンの分泌が抑制され、夜に自然と眠くなるようになります。
■深呼吸
深くゆっくり呼吸をすることで、緊張を抑える効果を持つ副交感神経が優位になり、自律神経のバランスを取り戻すことができます。息を吐く際は、吸うときよりも2倍程度の時間をかけるのがポイントです。
■エアコンによる寒暖差を防ぐ
身体は冷えると体温を逃さないように血管を収縮させ、血流が悪化します。この状態が長く続くと、自律神経がうまく働くなることがあります。また温度差のある場所を頻繁に行き来すると、自律神経が乱れる原因となります。なるべく外と室内の温度差は3~4℃程度に抑え、寒く感じる場合は冷たい飲み物は避け、温かい飲みものを飲むなど身体を温める対策をするようにしましょう。
■寝る前のスマホやパソコンを控える
スマホやパソコンの画面を見ると、脳を刺激して興奮状態になります。さらに首や肩に無理な負担がかかると、血行が悪くなって自律神経に影響をおよぼします。特に寝る前は質の良い睡眠の妨げにもなるので、控えるようにしてください。
このほか軽い運動(20分程度のウォーキング、ストレッチ、筋力トレーニング)や入浴(38~40℃程度のぬるま湯)は、自律神経のバランスを整えるだけでなく、ストレス解消やリラックス効果にもつながります。
漢方から考える改善方法
漢方では、こういった気圧や気温の変化で悪化する場合、「水毒」が関わっていると考えます。
「水毒」とは、身体の中の水分バランスが乱れ、頭重感(頭がダル重い)、むくみ、痛み、吐き気、めまい、耳鳴りなどさまざまな症状を引き起こしている状態を指します。
下記のチェックリストに1つでもあてはまる方は、「水毒」体質かもしれません。
- □ めまいや立ちくらみを感じることが多い
- □ 頭痛や頭重感(頭がダル重い)を感じることが多い
- □ 耳鳴りがする
- □ 冷え症である
- □ 車酔いをしやすい
- □ からだのむくみが気になる
- □ 下痢をしやすい
- □ 上記のような不調が季節や天候の変化で悪化する
■漢方から考える食養生
日本では古くから「食養生」といって、身体が求める食事を正しく選ぶことで、健康を維持していくという考え方があります。
日々の食事で、「水」のめぐりを整える食材を取り入れてみるのもおすすめです。
【「水」のめぐりを整える食材】
カボチャ、トウモロコシ、大豆、小豆、キュウリ、スイカ
また漢方薬の中にも、水毒(水滞)の改善を助ける働きが期待できる処方があります。なかなか症状が軽減されない場合には、漢方薬を上手に取り入れながら気象病になりにくい体質を目指してみてはいかがでしょうか。
頭痛におすすめの漢方薬はこちら
https://www.tsumurakampo.jp/product-region/?region=pain&trouble=010
疲れやすい方におすすめの漢方薬はこちら
https://www.tsumurakampo.jp/product-region/?region=fatigue&trouble=003
気分の落ち込み、不安感におすすめの漢方薬はこちら
https://www.tsumurakampo.jp/product-region/?region=stress&trouble=005
御苑アンジェリカクリニック
院長 神藤 慧玲(しんとう えり)
http://gyoen-angelica.com/
■経歴
千葉大学医学部卒業
千葉県内・東京都内大学病院・東京都内総合病院
慶愛クリニック・慶愛大木クリニック
北里研究所東洋医学研究所研修を経て
御苑アンジェリカクリニックを開院
東京慈恵会医科大学にて痛みの脳画像研究を行っている
■専門・資格
日本麻酔科学会 専門医
日本東洋医学会 会員
日本ペインクリニック学会 会員
日本抗加齢医学会(アンチエイジング学会) 専門医